【創作】『ゆなな、フリーズしたってよ』 のまとめ全 25 件

1 1人目 名無し48さん(仮名) 転載ダメ 2015-11-01 14:33
珠理奈「ゆなな、またフリーズしちゃったんだって?」

楽々「はい……緊張しちゃってるんでしょうか」

珠理奈「違う、そうじゃないよ」

楽々「え?」

珠理奈「皆には言わないでって言われてたんだけどね…ゆななは」

楽々「…はい」

珠理奈「記憶が1日でリセットされるアイドルなの」

楽々「…え?」

珠理奈「忘れちゃうの…1日の出来事を」

楽々「そんな、だって踊れてるじゃないですか!」

珠理奈「毎朝、覚えてる」

楽々「それって」

珠理奈「ゆななにとっては毎日が“初日”ってこと」
2 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:34
楽々「毎日が初日……?」

珠理奈「そう。踊りは完璧だけど、
MCまでは頭が追いついてないのかもしれない。
だから一瞬フリーズしちゃうのかも」

楽々「……(複雑な表情)」

珠理奈「どうしたの?」

楽々「そんなの、勝てるわけないじゃないですか…」

珠理奈「どうして?」

楽々「珠理奈さん…前に言いましたよね、
アイドルが最も輝く時、それは…公演の初日だって」

珠理奈「……」

楽々「記憶がリセットされ、毎公演が初日になるアイドル……
はっきり言って最強のアイドルです」

珠理奈「…戦うのが怖い?」

楽々「…よくわかりません。
   ただ、負けたくない…」
3 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:35
〜楽々が去ったあとの劇場〜

玲奈「……どうして、楽々ちゃんに言ったの?」

珠理奈「(後ろへ振り向き)見てたんだ」

玲奈「ゆななの能力を知ったアイドルは、絶望しちゃうよ……」

珠理奈「そうだね。絶望して卒業するか、あるいは闘争心に火がつくか」

玲奈「どうしてそんな賭けを?」

珠理奈「やる必要があったから」

玲奈「あの子達の成長速度は充分早いよ」

珠理奈「意識を変える必要があった。
    仲間からライバルに。」

玲奈「……何を焦ってるの?」

珠理奈「HKTとのシングル同日発売対決までに、2人を覚醒させる」

玲奈「………菅原は?」

続く
4 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:35
〜ホテルにて〜

ゆなな「ひとりじゃ眠れな〜い」

もぞもぞと楽々のベッドに入り、身を寄せてくる

楽々「ゆななは1人じゃ寝れないんだ〜」

ゆなな「寝れるもん!」

自分のベッドへと帰ると、
布団をぐるぐると身体に巻く

ゆなな「楽々なんかしらな〜い!」

「し〜らない」と言ってぐるぐるとベッドの上を転がる

ゆなな「あっ」

ベッドから落ちたゆななは、
「まだベッドが続いてると思った」
と言って、恥ずかしそうに笑った。
楽々も声を出して楽しそうに笑っている。
「どうして泣いてるの?」とゆなな。
「楽しくて、笑いすぎた」と楽々。
微笑みながら涙をふく楽々は
「この事も忘れちゃうの?」と
ゆななに訊くことは、できなかった。
5 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:36
楽々はレッスン場のドアノブに手をかける。
ドアの向こうでは、床とシューズが擦れるような
キュッキュッとした音が鳴っている。
何の曲だろう?と耳をすます。
『星の温度』という曲だった。

ゆななは歌いながら片手を高く挙げ、
指の先へと視線を送る。

集中しているのか、楽々が
ドアを開けたことにもまるで気付いて
いない様子だ。

1人で毎朝練習しているゆななに、
「水くさいじゃん」と怒ってやるつもりだった。

けれど、言葉を発することができなかった。

一心不乱にアイドルをするゆななが、
あまりに輝いていたからだ。
このまま観ていたい。
記憶が1日でリセットされ、
毎日が初日になる最強のアイドルを。

……私のライバル。
ゆななは、私の生涯のライバルになる。

楽々の中で直感のようなものが働いた
その時だった。
ゆななが、鏡に映った楽々の姿に気付き「わぁ!」と声をあげる。
目を丸くしながら振り向く。

「あれ〜、楽々どうしたの?」
6 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:36
滴り落ちる汗。
ゆななは顔に戸惑いの色を浮かべる
と、「えへへ…」と微笑んだ。
楽々の表情が険しく見えたからだ。
いつもならば、
ゆななが笑えば楽々も笑っていた。
だか今日は違う。
楽々は一切笑うことなく、ゆななを
真剣な眼差しでじっと見据えている。

目をぱちぱちとして依然困った様子
のゆななが、口を開く。

「あたし…みんなよりへたっぴだから、練習しないと…」

その刹那、楽々が悲しい表情を浮かべ
たことを、ゆななは見逃さなかった。
思わず言葉を止めてしまう。
楽々が静かに足を前に出す。
一歩、また一歩とゆななに歩み寄る。

「楽々……?」

足を止めた楽々。
赤く潤んだ瞳から涙がつぅーと零れた。

「私達、ともだちだよね……?」

「ともだちだよ、どうしたの?なんか変だよ楽々」
 
「何で本当のこと、言ってくれないの?」
7 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:37
「え……」

思いがけない楽々の言葉に、
ゆななは動揺を隠せない様子だった。
「え、あっ……」と言って泣きそうな表情に変わっていく。
楽々がそんなゆななをじっと見据える。
涙をごしごしと拭う楽々。

「昨夜のこと、覚えてないんでしょ」

「……」何も言わず、楽々を見つめる
ゆなな。

「じゃあ、3月31日のお披露目は?」

「………」

「ウソ…、じゃあ、じゃあさ、
 オーディションのことは覚えてるんでしょ?覚えてるよね?」

「………」
ゆななの瞳から、
堪えていた涙が零れる。
―――それが、答えだった。

ゆななは泣きながら
「ごめんなさい」と言った。
涙を拭いながら、何度も何度も。
ふと、なにかに気付いた楽々が、
涙を拭うゆななの右手を掴む。
その手のひらに何かが書かれている。
「これって……」
楽々が泣きながら、
その文字を読む。

『わたしはSKE48。7期生。
 これを見たらまず、7期のみんなの名前を覚えること。
 次に左手を見ること』

「左手?」楽々は、ゆななの左手に
視線を送る。
ゆななは泣きながら微笑むと、
静かに手を開く。

楽々はボロボロと泣きながら、
ゆななの左手に書かれた文字を声に出す。

『後藤楽々、わたしの親友。
     そして、ライバル』
8 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:37
楽々は嬉しかった。
親友、そう思っていたのは自分だけ
じゃなかった。
ゆななもそう思ってくれていた。

そして、楽々が感じたように…
ゆななも楽々をライバルとして認めている。

それが……嬉しかった。

勉強でもスポーツでも同世代の子に
なら、負けたことはなかった。
楽々にとってライバルと呼べる存在
は、ただのひとりもいなかった。
SKE48に入り、小畑優奈に出逢うまでは。

「バカ、ゆななのバカ!
 1人で抱えないでよ!
 わたしに相談してよ…!
 ………友達なんだから」

「明日のわたしにそう伝えるね」

「え……?」と訊ねる楽々。

ゆななは自分の両の掌を交互に視線を
送ると「これね…」と言って微笑む。
「“いつ”のわたしが書いたか、分からないんだぁ…。
 起きた時にね、
 間違えて手を洗っちゃったの。
 けど、消えなかった。
 多分…ずっとあるんだと思う」

顔をあげ、楽々を見つめるゆなな。

「他にもあるんだよ、“わたし”のメッセージ」

「メッセージ……?」と訊ねる楽々。
実は、楽々はゆななの左の掌にある
文字を最後まで読んでいない。
というよりも気付いていなかった。
あまりに小さく書かれているからだ。
『ゆななノートを探すこと』と。

「えへへ…ゆななノート」
そう言ってゆななはバックから一冊の
ノートを取り出し、楽々に見せる。
表紙に『ひみつ』とひらがなで
書かれたゆなならしいノートだった。
「これに書いておくの」とゆななは笑う。
ぺらぺらとノートをめくり、ペンを手に取るゆなな。

『明日のわたしへ。
 楽々に秘密を話したよ。
 これからは何でも楽々に相談すること』
9 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:38
ぺたっと床に両膝を付け、
座り込んでいるゆなな。
ノートにそう書き終えると、なぜだか
得意気な顔で楽々を見上げた。
にこっとあどけない笑みを見せる。
「えへへ」

「貸して」楽々はそう言って膝を曲げ
、床にしゃがみこむ。
ゆななからノートを受け取ると、
ペンを持って何かを書き始めた。
ゆななが書いたメッセージのすぐ下に
書いている。
すらすらと、手馴れた様子でペンを走らせる。

ゆななは楽々が書いたメッセージを
読むことはできない。
目が点になっている。
「………?」と、首を傾げた。
「何て書いたの?」

楽々は顔を上げると、流暢な英語で、
ゆななノートに書いた英文を読む。

「in the morning I are together,
 practice I also with you 」

「……?」首を傾げていたゆななは、
さらに深く首を傾げる。
楽々はそれを日本語に訳した。

「私が一緒にいる朝は、私もあなたと一緒に練習する」

「いーの?」

「うん、一緒に頑張ろ」

「えへへ…うん!」

立ち上がった2人は、音楽に身を任せ、
ステップをふむ。
前のめりに地を蹴った――――。
10 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:38
その様子を部屋の外から見守っていた
松井珠理奈と北川綾巴。
「ファンの人達に見せたいね…」
珠理奈の眼差しは温かい。
「はい。2人の未来が楽しみですね」

「りょうはも、くまちゃんも、えごちゃんも、菅原ちゃんも、私はみんなの未来が楽しみっ!」

「頑張ります」綾巴はそう言って、
力強い眼差しで珠理奈に顔を向けた。
たがふと、不安げに視線を落とす。

――「勝てますかね…HKTに」

その夜。
六本木の高級マンションの上層。
脚を組んだひとりの女が、
部屋の壁一面に映し出されたとある映像を見ている。
SKE48研究生による「パーティーが始まるよ」公演だ。
女は映像と交互に手元にある資料に視線を送る。

「ふぅ〜ん……、小畑優奈か」

HKT48、指原莉乃が不敵に笑った。
11 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:39
指原の側には、スーツを着たマネー
ジャーらしき男が跪いている。
指原が何か言えば、
男は「はっ!」「はっ!」と頭を下げて応える。
まるで指原に仕える忍びの者だ。

イタリアの高級家具ブランド、
サッシーナのソファーに座る指原は、
頬の横に右手の人差し指と中指を立てた。
男が素早い身のこなしで、最新型の電
子タバコを指原の指に挟む。
指原は白煙を「ふぅ〜」とSKE48の映像へと吹きかける。

「もったいないね…“この子たち”」

300万はするであろう高級テーブルPANTHEONに、指原はその綺麗な右脚を乗せた。
まるで、私の脚は300万以上の価値よ、
と言わんばかりの振る舞いだ。
だが、彼女の価値は脚よりもその“眼”にある。
アイドルの才能を見抜く“眼”。
指原莉乃の慧眼が、小畑優奈と後藤楽々を視る。

「時代が時代なら、
 48グループのコアになれたかもね。
 あっちゃんと優子さん…
 さや姉とみるきー。
 珠理奈と玲奈ちゃんのように、ね」

電子タバコを咥え、白煙を口から吐く。
白く残った後すぐ消える。
指原はふっと不敵に微笑する。

「けど…悲しい、悲しいなぁ」

ぼぅーと彼女たちの公演を見る指原。
次第に笑みが消えていく。
どことなく切ない目をしている。

「そんな時代は来やしない…」
12 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:39
指原は悲しそうにそう呟いた。
映像の中で、ゆなな達が懸命に歌い踊る。

“パーティー!”

未完成な彼女たちの歌声が、
全てを手に入れたアイドルの胸に
――――虚しく響く。
HKT48、指原莉乃の冷然なる声が、
闘いの始まりを告げる。

「ここで、わたしに潰されるから」

東京の夜景を一望できるルーフバルコニーに出た指原。
ゆななが買えないようなGUCCI特注の
500万はするであろうロシアンセーブル
のファーコートを身に纏っている。
手元にある“報告書”を見て氷の微笑を浮かべる指原莉乃。

“クスッ”

東京の夜景をその手で掴むように
右手を伸ばす。
静かに、力強く掌を握りしめた。
アイドルの頂に立つ女は、
そこから全てを見ているのかもしれない。

「ふふっ、記憶がリセットされるアイドル……か」

その頃、指原に秘密を知られたことを
知らないゆななは、眠れずに羊を数えていた。
隣のベッドにいる楽々が声をかける。
「それ、日本語じゃ意味ないよ」

「え?」

「シープって息を吐くから眠れるの」

「……あー!(>_<)」
羊を101匹まで数えていたゆななは、
しばしフリーズした後そう叫んだ。
13 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:40
11月5日、SKE48研究生公演。
出演メンバーは、
浅井裕華・太田彩夏・小畑優奈・
川崎成美・後藤楽々・杉山愛佳・
高畑結希・辻のぞみ・野島樺乃・
町音葉・村井純奈・一色嶺奈・
上村亜柚香・白井琴望・水野愛理・菅原茉椰。

この日、彼女達はいつもより緊張していた。
だが普段以上の圧巻のフォーマンスを魅せる。
観客の中には、彼女達がいつもより
緊張していたという若干の変化に
気付いた者もいた。
しかし、その理由については分からないまま公演は終盤にさしかかる。

番組の撮影が入ったわけでもない。

SKE48の選抜メンバーが来たわけでもない。

だが、この日の劇場は慌ただしかった。

舞台裏は異様な空気に包まれている。

舞台袖には、「桜の花びらたち」を歌う研究生を見つめる女の姿がある。
女の隣には、支配人湯浅の姿もある。
険しい表情の湯浅が静かに口を開く。

「……偵察か?」

女は答える。
「やだなぁ、大人気の研究生公演を一度見たかっただけですよ」

「それだけか?」
女にそう訊ねた湯浅は、
女の視線が小畑優奈に向けられている
ことに気付いた。
狙いは小畑か…。
こいつがウチの劇場にくるなんて、
まさか小畑を引き抜くつもりか。
湯浅はその思惑を読むかのように
彼女の横顔を見据えている。

「何を企んでいる?…“指原”」
14 1人目 2015-11-01 14:41
「……」
不敵な笑みを浮かべる指原は、
何も言わず、何度か視線を変える。

「私が、SKEからゆなちゃんを奪おうと している…もしかしてそんな風に思ってます?
 ないない。大丈夫ですよ、湯浅さん」

湯浅の背中にゾッとした何かが走る。
恐怖だ。指原に対する恐怖。
自信満々の顔で、人の心を読み当てる。
最近の指原は、恐ろしいほどに似てきた。
秋元康に。

「小畑は希望なんだ。
 いや…小畑だけじゃない。
 みんな、俺にとっては大切な家族のような存在なんだ。
 もう誰もよそに渡したくはない。
 お前にも分かるだろ…?指原。
 だから頼む、彼女たちに手を…」

そう言いかけた湯浅は、
指原の目の動きを見てある事に気付く。

違う、小畑じゃない…

後藤か?……違う。

いったい誰を見ている……指原。

ゴクリと息を呑む湯浅。
指原があるメンバーに視線を定めた。
その目はまるで、獲物を狙う獣。
あるいは、イブを誘惑する蛇のような目で、指原莉乃は

――『野島樺乃』を見ていた。

ニヤリ、と蛇が嗤う。
15 1人目 2015-11-01 14:41
公演を終えた研究生たちが一斉に
指原の前に集まった。
緊張した面持ちで「お疲れ様です!」
と声を揃え一礼する。
だが、ゆななだけはあまりの緊張の
せいか、皆からワンテンポ遅れた後、
「………おっ」で一礼し、
頭を上げた後に
「お疲れ様でございます!」と声を裏返らせた。

そのおかげか、張り詰めた空気が
和らぎ、スタッフや研究生達の顔が笑顔になる。

指原は、微笑の仮面を張り付けた
ような創り笑顔で“パチパチ”と拍手を研究生たちに送っている。

パチパチ、パチパチ、

指原が足を前に出した。
中心にいる小畑優奈のほうへと歩む。
研究生たちは小畑に視線を送る。

パチパチ、パチパチ、

指原の拍手の音だけが静まり返った劇場に響き渡る。

やっぱりゆなななんだ……

指原に声をかけてもらえることを
期待した研究生たちは、
少し落胆した表情で見ている。

パチパチ、パチパチ、

だが、指原は小畑の横を通り過ぎた。

“え……!?”

研究生たちは意表をつかれた顔だ。
ゆななじゃない。
指原は小畑に見向きもしていない。
パチ、パチ、パチ、パチ……
足を止め、両手を静かに下げる指原。

「すっごく良かったよ。
 野島樺乃ちゃん…だよね。
 決めたっ!指原の番組に出ない?」
16 1人目 2015-11-01 14:42
「え……?」野島は困惑した表情だ。
指原の言葉の意味を分かっていない様子だった。
緊張しているせいもあるだろう。

「指原カイワイズ、分かる?
 探してたんだよね〜、
 “名古屋カイワイ”で!
 これ、かのちゃんにとってすっごくチャンスだよ!」

指原はそう言って優しい笑みを浮かべた。
湯浅は怪訝な顔つきで指原に視線を送る。
指原が何かを企んでいることは分かる。
秋元康と同じ目をしているからだ。
これは何かある、待ってくれ。とは言えなかった。
野島の嬉しそうな顔を見たら、
湯浅は何も言えなかった。

ユニット入りした小畑や後藤、そして菅原の背中を見て、
悔し涙を流しながらも、
「おめでとう」と言える野島の優しさ
を湯浅は知っている。
報われてほしい。

そうだ、これもチャンスなのかもしれない。

指原なら、上手く野島のキャラを引き出してくれるかもしれない。

指原への猜疑心と淡い期待が、
湯浅の心の中で複雑に絡み合っていた。
17 1人目 2015-11-01 14:42
「ありがとうございます……ありがとうございます……!」
喜びのあまり涙を流す野島の頭を、
ポンポンと優しく触れる指原。

「ご飯、一緒に食べようね」

祝福と嫉妬が入り混じったような
素直な反応を顔に浮かべる研究生たち。
だが、後藤楽々だけは違った。
指原を見つめながら、感じていたの
は“恐怖”だ。

指原が野島に声をかけた時に一瞬見せ
た恐ろしいほどの冷たい眼光。

楽々はそれを見逃さなかった。

脚が震え、一歩も動けない。
研究生たちの中で唯一、
選抜として活躍している後藤楽々。
指原と近いレベルにいる珠理奈や玲奈のそばにいた彼女だけが、
指原の本当の恐ろしさを理解できたのかもしれない。
楽々は思った。

“この人が……48グループの頂点。
 私たちが戦う相手……”

楽々の額から冷たい汗がツゥーと滴り落ちる

“勝てるわけない……”

楽々の様子に感づいた指原。
静かに振り向き、楽々に視線を送る。
不敵な微笑みを浮かべている。
これが気圧されるということなのか。
楽々は、自分が反射的に指原から
視線を逸らしていたことに気付く。

“いや、私たちはあくまでユニット…
 HKTさんはフル選抜……
 例え負けても…仕方がない”

楽々はそう自分に言い聞かせた。
涙ぐんでいるのは、悔しさだろうか。
自分でも何故泣いているのか分からなかった。
その時だった――。

ちょんちょん、ちょんちょん。

俯いた楽々の腰を後から誰かが突付いてくる。
振り返る楽々。

「えへへ…」と微笑むゆななの姿が、
そこにはあった。
18 1人目 2015-11-01 14:43
気付いた指原が、楽々に向けていた
敵意をゆななにも発する。
「……?」と首を傾げるゆなな。
まるで動じていない。
指原は一瞬、苦虫を噛み潰したような顔する。
ハッとした表情でゆななに顔を向ける楽々。

そっか…記憶をリセットしたゆななは、
朝詰め込んだ直近の48グループの情報しか知らない。
さっき、ゆななが緊張していたのは、
私達の緊張が伝染してしまっただけなんだ。

知っているのは、おそらく
HKT48指原莉乃という名前だけだ。
総選挙1位だとか、AKB48の超選抜だとか、そんな萎縮してしまうほどの指原さんの凄さを覚えていない。

記憶をリセットした今のゆななにとって……
指原さんは、ただのアイドル。

そうだ…そうだよね、ゆなな。

楽々の瞳に、徐々に光りが戻っていく。

恐れることはない。
指原さんは、私達と同じただのアイドルだ。
負けられない、負けてたまるか。
前のめりに地を蹴るんだ……!!
指原のほうへと顔を向けた楽々。
その目には強い意思が灯っていた。
19 1人目 2015-11-01 14:43
小畑が指原の前へちょこちょこと
歩いていく。
ペコリと頭を下げた。

「あっ…よろしく…お願いします」

「……?なに?」

「あっ…はい、かのちゃんのことと…
 それと、HKTさんが、CD出す日…
 私たちも…CD出すので……」

「ああ、だから?」

「あ、えっと…私たち、がんばります」

「頑張る?何を頑張るの?」

「あ…あの…HKTさんに、負けないように……」

小畑が指原にそう言った瞬間、
その場の空気がピリッと
緊張で張りつめる。
微笑を浮かべていた指原の顔から、
笑みが消えたからだ。
後藤楽々は“負けない”と言わんばか
りの強い眼差しで指原を見ている。
楽々だけじゃない。
菅原、一色、浅井、純奈も同じ目をしている。
彼女達を「ふっ」と鼻で嗤った指原は、
楽々を睨んだ後、小畑に視線を戻す。

「勝負になると思ってんの?」

「え……あっ」

「“私達”に勝てると思ってんの?」

「……おろろ…」

湯浅が戸惑う小畑のところに行こうと
足を前に出した。
刹那、湯浅の肩を背後から誰かが掴んだ。
足を止め振り返る湯浅。
「お前……」
楽々もまた、その“誰か”の存在に気付く。
安堵して緊張の糸が切れたのか、
声を押し殺して泣き始めた。
楽々を抱きしめたその誰かは、
指原に向かって声を張りあげる。

「SKEは負けない……!!」

振り向いた指原の目に、
松井珠理奈の姿が映った―――。
20 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:44
「珠理奈、あれはマズいだろ」 

そう言ったのは支配人の湯浅だ。 
指原が劇場を去り、研究生たちも自宅へと戻った。
あの時、指原は珠理奈の言葉に対し、
何も反応を示すことはなかった。
湯浅には妙にそれが気がかりだった。
饒舌なあの指原が何も言わず踵を返した。
今や、48グループでの指原の影響力は
幹部の中でも群を抜いている。
プロデューサーの秋元康と同等にまできている、というのが湯浅の見立てだ。
彼女を怒らせたらマズい。

「どうしてあんなことを言ったんだ」

珠理奈はずっと劇場のステージを見ている。
ひとつだけ付いたスポットライトの
光が、ステージの0番を照らしている。
0番、センターの立ち位置だ。
黙ったままの珠理奈は、0番を見つめ、
今何を思っているのだろうか。

「……玲奈ちゃんなら、」

「玲奈?」

「はい、玲奈ちゃんなら……
 もしあの場にいたらきっとそう言ったと思うんです」

「…あいつは、負けず嫌いだったな」
21 1人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:44
「そうですね、わたしよりも。
 ………それに……」

「それに?」

「今の研究生達は、玲奈ちゃんと入れ替わるようにして入ってきた。
 いや…もしかしたら、
 玲奈ちゃんは彼女たちを見て、
 “もう大丈夫”って思ったのかもしれない」

「卒業しても、か?」

「今回のユニットは、その研究生から3人。
 玲奈ちゃんと同じチームEで頭角を表した熊ちゃん。
 可愛がっていたえごちゃん。
 ずっと気にかけていたりょうは。
 全員、玲奈ちゃんが認めていたメンバーなんです」

ステージを見ていた珠理奈は、
振り返ると湯浅をじっと見据える。
ステージを差す光が彼女の背中を
ぽぅーと照らしている。

「絶対に負けたくない」

珠理奈は力強くそう言った。
ステージを背景に立つ珠理奈のその姿
は、
SKE48を背負う覚悟の強さが、
目に見えて分かった瞬間でもあった。

大声ダイヤモンドの頃から、
いつかはこんな日が来ると思っていた。
小さな少女が、成長して、
SKE48をたったひとりで背負う時が来るだろうと。

湯浅はそれが“今”なんだと思うと、
胸の奥から込み上げてくる
切なさのような感情が、涙を呼んだ。

そして、珠理奈は最後にこう付け加えた。

「ここから、SKEの2度目の栄光時代が始まるんです……」

月であった松井玲奈が卒業して、
独りになった太陽は、
今でも力強く輝きを放つ。
松井珠理奈はにっこりと微笑む。

―――「あの子達は、強くなる」
22 2人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 14:53
わーいゆなな小説スレがこっちにもきてる(*´ω`*)
23 3人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 15:06
ここは無事なのかw
24 4人目 名無し48さん(仮名) 2015-11-01 15:07
こんな事もあろうかと立てといて正解だった
25 5人目 名無し48さん(仮名)(2級) 2015-11-01 15:23

oshimai NG1!0 pts. HP: 0 pts. Consumed 47 MP (sdn/1446356036).
お亡くなり。(-人-) R.I.P This thread.
引用元:http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/sdn/1446356036/
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